大屋根リング建設プロジェクト


2025年、大阪の地に世界が集う――。
万国博覧会。オリンピックよりも古い起源を持つこの祭典は、芸術・文化・技術が融合する「平和の象徴」として、世界中の注目を集めている。
2025年、そんな万博が大阪の地で開催された。
趣向を凝らした世界各国のパビリオンよりも注目されたのが、万博会場を囲うように建設された大屋根リングだ。
そのスケールは圧巻である。内径615メートル、一周およそ2キロメートル。構造物としても歴史的に類を見ないこの建造物は、木造建築として世界最大級を誇る。その巨大なリングを形づくるのが、日本各地から集められた木材たちだ。そして、その木材の調達から加工、会場への搬入まで――まさに「すべての流れ」を設計・実行したのが、NXエンジニアリング(旧 日本通運重機建設事業部)である。




万博会場からほど近い倉庫。そこには全国から集められた集成材が、積み上げられていた。NXエンジニアリングが、大屋根リングプロジェクトでまず取り組んだのは、調達・加工・出荷という一連のサプライチェーンネットワークの構築。必要となる木材を全国の製造元から集め、そこに取り付けられる30万本におよぶ金物もまた、別ルートで同時に調達。こうして入庫した木材に一つひとつ、鉄板やピン、ボルトなど多種多様な金物を取り付け加工していくのだ。
加工後は、綿密に練られた施工計画に合わせて、6つの施工エリアに分けられた万博会場へ、決められた時間・数量(ジャスト・イン)で出荷していく。倉庫内での加工には、オリジナル専用工具の開発や作業手順の効率化を徹底し、加工時間は従来の半分以下にまで短縮された。ピーク時には、トレーラー6台分の木材が毎日入庫し、同じく6台分が出庫。分刻みのスケジュールで高度な物流が成されていった。
ゼロから物流ネットワークを構築し、運用まで担う。その姿は、物流会社であり、商社であり、建設会社であり、コンサルタントのようでもある。




倉庫で加工された木材は、建方(たてかた)作業が行われる万博会場へと送られる。建方とは、構造体を地上で組み立て、吊り上げ、建造物を完成させていく作業のこと。ここでも、NXエンジニアリングの技術と工夫が活きる。
南東エリア(施工主:清水建設株式会社様)と西エリア(施工主:株式会社竹中工務店様)、それぞれの工区で施工が行われる中、NXエンジニアリングが提案したのは「貫梁挿入工法」。この工法は、木材に特殊な治具(バランサー)を取り付けることで、クレーンで吊り上げた際にも木材が傾くことなく水平を保ち、一度の作業で正確な据え付けを可能にした。これにより、作業の効率は飛躍的に向上し、少人数・短時間での施工が実現された。
当初、工事が開催に間に合わないのでは?という懸念もあったが、現実は予定通り。しかしその裏側では、プロフェッショナルたちによる、日々の創意工夫が存在した。表からは見えない金物加工、空中での水平保持、分刻みの搬入――そのすべてが、「大屋根リング」の施工を成功へと導いていたのだ。




大阪・関西万博大屋根リング建築という巨大プロジェクトにおいて、NXエンジニアリングが果たした機能は単なる「運ぶ」「建てる」だけではなかった。その真骨頂は、木材と金物をつなぐ、倉庫と現場をつなぐ、そして企業と企業、課題と解決をつなぐ…。そのすべてを実現する「スキーム構築」こそが、NXエンジニアリングの機能であり、最大の武器と言える。
現実の制約と複雑な要件を一つひとつ解きほぐし、最適解を導き出していく、NXエンジニアリングの直向きな姿勢こそが、“これから”を創る原動力だ。以前からNXエンジニアリングが標榜してきた「運べないものは、ない。」それは今、「運べないものは、ない そしてその先へ」と進化している。
2025年、大阪。
世界が見上げる大屋根リングの裏には、“運ぶ”を超えたプロフェッショナルたちのドラマが、静かに息づいている。
日本通運重機建設事業部 EXPO 2025 大阪・関西万博 -大屋根リング 輸送・建て方ー